やらぬに越したことはない助成金

私は社会保険労務士ですが、助成金の申請をしている、という分野は、同業の中で他の就業規則作成や人事制度策定の業務などと比べ、ちょっと違った見方をされます。その心理は以下の通りです。

・ヒトの問題をおカネで解決というのは、なんとなく嫌だ。

特に日本という、ヒトの心をおカネで買うことの露骨さが非難される国では、露骨でなくても軽蔑や嘲笑の対象になるコトが少なくないのです。「へっ、カネで動きやがってよ」というイメージです。ちょっと引くマイナーな気持ちは理解できます。

社労士業界でより尊敬される分野は、以下の通りです。

・ヒトの問題を、法律や制度のほか、メンタルや心理学でポジティブな方向に変えて、企業の生産性を上げる。

おカネの動機と比べるとスマートで、なんかカッコイイですね。私も人事制度などは一通りやっています。しかしヒトというのは、そのようなカッコイイことだけで動いているものなのでしょうか。

収益が上がって、雇用も生みだす会社さんは、カッコイイことだけで世の中動くとは、全然思っていません。人間は仏教でいうところの“業”(ごう)の世界、傲慢、悪口、怒り、嫉妬、欲張り、えこひいき、裏切りなど、数えられないほどのカッコ悪さを、必要悪として、背負って生きています。少なくすることはできても、なくすことはムリでしょう。

それがヒトの問題の根幹であり、また、ヒトのエネルギーのもとでもあります。また社会の感動の原点です。「倍返し!」なんてマイナーな感情の言葉が流行語になるくらいですから。

ただ、そんなカッコ悪さを少しでも昇華して、カッコイイことに変えられたヒトが、ホトケのように成長するのではないでしょうか。転じて言えば最初はおカネでも、それをヒトや社会の成長につなげられれば、結果としてイイのではないでしょうか。

カッコイイことだけで会社が、ヒトが動くなら、それに越したことはありません。しかしおカネが降りるようにすることで、企業にヒトを戦力として育成する教育のカリキュラムができ、育児休業を取らせ、障害者も雇用され、非正規社員は望みの正社員になれる、そんな結果が出れば、助成金は持って瞑すべし、目的は達したといえるのです。

たとえ社労士が、「助成金は卒業しました」と宣言しても、その情報の提供と、受給のための努力を、顧問である限り事業所は求めてきます。それを“カネ目当て”と、非難しないような人格を作りたいものです。この会社は、労務管理をより良い方向に持っていく意思を持ち、その機会を得ようというのだ、と思いましょう。

記憶喪失になってもおカネだけは忘れません。ヘタに語る理論や人道論より、ヒトの欲望に強烈に訴えかける力があるのです。

本書が、原則“厚生労働省管轄”の助成金限定としているのも、きっかけはおカネでも、目的は資金繰りでなくそういう“カッコイイ”会社作りということを強調したいのかも知れません。
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by sinrousya | 2013-12-11 06:00 | ★助成金小ばなし2013


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